バタフライ備忘録

日本産の鱗翅目(チョウ類)についてまとめたものです。

2019年04月

Parnassius citrinarius(パルナシウス キトリナリウス)薄翅揚羽 Glacial Apollo
PC022166PC022162
 葉に産み付けられた卵
【特徴】
ウスバシロチョウと呼ぶ方が聞き慣れているが,シロチョウ科ではなくアゲハチョウ科であるため,本来はウスバアゲハと呼ぶべき蝶である。ウスバアゲハの仲間はユーラシア大陸に多くの種がいるが,大半は赤斑が散りばめられた美麗種で世界的に愛好者が多い。しかし,日本のこの2種のみ白一色で,シンプルなところがかえって日本らしく,誇らしい気がする。5月初旬より草原や少し開けた林縁部で,非常にゆったりとふわふわと優雅に飛翔し,各種の花で吸蜜する。雌は食草の近くの茂みに潜り込み,枯草などに産卵する。個体変異は少ないが,青森県青森市では著しく白く,福井県,山形県,福島県では黒化した個体が得られる。青森市(七戸町付近)の白いウスバアゲハは,翅脈まで白い鱗粉が載っているものがあり,非常に綺麗である。
【分布】
本州に広く分布する。四国,北海道にも分布する。北海道では,ヒメウスバアゲハが主流で,本種は根室,胆振,十勝,檜山管内に局所的に生息する。奥尻島のウスバアゲハは絶滅したと思われる。
【食草】
ムラサキケマン,エゾエンゴサク
【生態】
年1回の発生。卵で越冬する。幼虫は食草の周辺の枯葉を探すと見つかることが多い。繭を作り,その中で蛹になり,5月以降に羽化する。
【近似種との区別点】
ヒメウスバアゲハは北海道にしか分布しない。ウスバアゲハは雌雄とも体毛が黄色であり,受胎嚢はウスバアゲハは小さく,ヒメウスバアゲハは大きいことから区別できる。
【雌雄の違い】
交尾後の雌には,白い受胎嚢(スフラギス)ができる。
【特記事項】

Lethe diana(レーテ ディアナ)黒日陰 Diana Treebrown

IMG_2172 IMG_2115
 雄        雌
P6231297 thumb_IMG_2370_1024
 交尾       卵
thumb_IMG_2361_1024 thumb_IMG_2365_1024
   1齢       2齢
thumb_IMG_2366_1024 thumb_IMG_2372_1024
クマイザサの葉脈に沿って並ぶ2齢  褐色の3~4齢幼虫
【特徴】
北海道から九州まで広く分布する普通種。Lethe diana diana(日本本土亜種:名義タイプ亜種)のほかに,伊豆七島の御蔵島だけに生息するLethe diana mikuraensis(御蔵島亜種) がおり,小型で裏面の蛇目模様が極端に小さくなる。
【分布】
北海道から九州まで広く分布する。
【食草】
タケ,ササ類。
【生態】
年3~4化発生するが,寒冷地では1化である。2~4齢幼虫で越冬するが,越冬幼虫は緑色と褐色のタイプがいて,2~3齢では緑色,4齢では褐色が多くなるという。
【近似種との区別点】
ヒカゲチョウと似るが,本種の方がやや小さく,色が黒っぽい。また,後翅裏面にある暗色線が本種では眼状紋に沿って「くの字」に大きく曲がるが,ヒカゲチョウでは眼状紋に沿って曲がらない。
【雌雄の違い】
翅表の色が雌は雄より淡くなる。また,雄は前翅の裏面の黒い毛の束があり,後翅表面の中室の上部に黒い性斑がある。
【特記事項】
御蔵島亜種は,採集禁止である。

Papilio machaon(パピリオ マカオン)黄揚羽 Old World Swallowtail
IMG_1364 IMG_1016
夏型
IMG_1613キトウシ
春型
IMG_1188IMG_1222

IMG_1184

IMG_1206IMG_1241
亜終齢      終齢
P9050555 IMG_1238
 黒い終齢幼虫    前蛹

5IMG_1255

P7161518

マンション5階のバルコニーのパセリに自然産卵し蛹化
IMG_1363 IMG_1371
   交尾    アオムシコバチに寄生された蛹
【特徴】
アゲハとともに,身近でなじみ深く,小学校などの飼育教材として利用しやすい蝶である。北海道ではアゲハは少なく(道南,道央のみ),キアゲハの方が一般的である。
【分布】
北海道から九州,屋久島まで広く分布する。アゲハと異なり,屋久島以南の南西諸島には分布しない。
【食草】
ミツバ,セリ,アマニュウなどのセリ科。ニンジン,パセリなどの栽培植物にも着く。
【生態】
本州以南では3~4化。北海道では2化。
【近似種との区別点】
アゲハより黄色みが強い。前翅中室の基部がアゲハでは白と黒のまだら状の線が入るが,本種では一様に黒色である。
【雌雄の違い】
夏型では雌の黄色味は雄より弱くなり,また黒い部分が多くなる。しかし,春型では雌雄あまり差がなく,腹部の形状を観察するのが良い。
【特記事項】

↑このページのトップヘ