バタフライ備忘録

日本産の鱗翅目(チョウ類)についてまとめたものです。

2019年07月

Parnassius eversmanni (パルナシウス エバースマニ)黄色薄翅羽  Eversmann's Parnassius
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ハイマツにからむ雄         交尾嚢を付けた雌
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  地面で吸水する雄        吸蜜中の汚損個体        
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 交尾前の羽化したての雌          雌
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大雪山系の雪渓(ここを登る)        生息地
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かなりきつい斜度の雪渓(滑れば命はない?)  雲海も下に見える 

【特徴】
国外ではロシアや朝鮮半島北部の極東とアラスカ等に生息するが,日本産は特に黄色と赤班が鮮やかで美しく,daisetsuzanusという亜種名がついている。天然記念物。6月の後半に大雪山系の雪渓をアイゼンを履いて登らないとお目にかかれない高山蝶である。雪渓はかなりの斜度があり,命の危険を感じるほどである。しかも,3つほどある雪渓を超えないと,生息地にはたどり着けない。キイロウスバアゲハは,ウスバアゲハの仲間であるが,飛び方はフワフワという感じではなく,飛翔はびっくりするほど速く,1週間ほどで黄色はかなり失せてくる。陽が陰るとハイマツの間などに隠れてしまうため,撮影は天候次第である。
【分布】
日本では大雪山系,十勝連峰などの高山帯のみに生息する高山蝶。十勝連峰産は,後翅の黒帯が太くなると言われる。
【食草】
高山植物の女王と言われるコマクサを食する。
【生態】
1年目は卵,2年目は孵化後に幼虫から蛹へと成長し越冬,3年目の初夏に羽化する。羽化は雪どけに左右されるが,駒草平付近では6月中旬頃から羽化が始まり,これより高所では1週間から10日程度遅れる。
【近似種との区別点】
近似種はいない。
【雌雄の違い】
雌は交尾後に受胎嚢(スフラギス)をつける。雌は雄より翅の黄色い部分が少なく,黒い部分が多くなる。
特に,後翅の亜外縁部に見られる黒い帯が雄より極めて太くなることから区別できる。また,赤班も雌の方が発達する。
【特記事項】
アサヒヒョウモン,ダイセツタカネヒカゲとともに,1965年5月12日に天然記念物に指定。

Fabriciana nerippe(ファブリキアーナ ネリッペ)大裏銀豹紋 Large High Brown

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【特徴】
日本のヒョウモン類で最大で,特に雌は大きく黒斑が発達し,見ごたえがある。かつては北海道を除く本州,四国,九州に広く分布していたが,ヒョウモンモドキとともに,近年,一気に減少したチョウの一つである。奈良の若草山が有名産地であったが,現在では山口県のごく一部(秋吉台)と,九州の自衛隊演習場内などに局地的に生息しているに過ぎない。定期的に草刈りなどで管理された広大な草原が減少したのが大きな理由とされている。とても多くの卵を産卵することでも知られ,2000個以上の記録がある。個人的に,1980年代になって新しく発見された珍産地(島根県知夫里島,現在は絶滅)は,大学の先輩が発見し,後輩からその標本を1頭貰って所持している。普通,雌の方が大きいが,通称デカオスと言われる幼虫期を1齢長く生育した巨大な雄が採集される。
【分布】
現在,確実に生育しているのは山口県秋吉台,自衛隊霧島演習場(鹿児島県姶良郡湧水町),大野原演習場(長崎県東彼杵郡東彼杵町と一部は佐賀県嬉野町)などである。
【食草】
ツボスミレなどのスミレ類
【生態】
秋に枯草などに産卵された卵は,孵化し1齢幼虫のまま越冬する。幼虫は5センチ以上に大きくなり,敏感で,移動はかなり素早い。7月の初旬から年1回発生する。
【近似種との区別点】
ギンボシヒョウモン,ウラギンヒョウモンと似るが,雌は黒色部が発達し区別は容易。雌雄とも後翅裏面外縁部の白紋が山2つ形(M字型)で,他の2種は山型(Uの逆型)なので区別できる。また雄では後翅裏面前縁部の銀白紋の数が5つで,4つのギンボシと区別できる。
【雌雄の違い】
雌は黒色部が発達し,大型。
【特記事項】
採集禁止地域が多く,残された生息地でも採集できるのは佐賀県のみとなった。

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