バタフライ備忘録

日本産の鱗翅目(チョウ類)についてまとめたものです。

カテゴリ: タテハチョウ科

Limenitis populi jezoensis(リメニティス ポピュリ 亜種エゾエンシス)  大一文字 Poplar Admiral
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     樹液に来た雌           葉で休む雄
IMG_3267シビナイ橋
     糞で吸汁する雄       ドロノキのあるポイント
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  グレード4(G4)の雄            裏 面
【特徴】
その飛翔から「雄大」という言葉がぴったりするような,優雅で堂々としたオオムラサキと双璧の大型タテハチョウである。そのため蝶愛好家に,とても人気がある。雄は獣糞に群がったり,地面で吸水を盛んに行うが,雌は食樹の高いところにいて,なかなか下に降りてこない。年によっては,クロオオイチと呼ばれる暗化した個体が得られ,グレード1(G1)~5(G5)までがあり,G5では翅表はほぼ真っ黒である。蛹の時期に低温にさらされるとか,風で蛹が振動を受けると暗化する等が原因と言われるが定かではない。北海道では大雪湖周辺で良く得られるが,本州でも数例があるという。
【分布】
本州では北関東,中部地方の山地の樹林帯の一部に生息するが,北海道では道南を除き広く分布する。
【食草】
ドロノキ,ヤマナラシ
【生態】
年1回の発生。北海道の低山地では,早い時は6月中旬から見られる。層雲峡,大雪湖周辺では7月15日頃から雄が羽化し,雌はその1週間後くらいから発生する。卵は葉先に1卵ずつ生み,幼虫は葉を丸めて筒を作りその中で生活し,糞塔を作る。3齢で越冬する。
【近似種との区別点】
近似種はいない。
【雌雄の違い】
後翅の白帯が雌では太くなることから容易に区別できる。
【特記事項】

Vanessa indica (ウァネッサ インディカ) 赤立翅 Indian Red Admiral
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     日光浴する            トラップに来た雄             
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      裏面          エゾイラクサについた終齢幼虫
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    エゾイラクサに下がる蛹      アカソに下がる蛹
【特徴】
都市近郊の自然が残されているところであれば普通にみられる。
【分布】
北海道から南西諸島まで,日本に広く分布する。
【食草】
イラクサ,エゾイラクサ,カラムシ,アカソなど
【生態】
幼虫は葉を袋状にして,その中で成長する。北海道の旭川周辺では,9月初旬に第2化が羽化する。本州では年に数回羽化する。
【近似種との区別点】
近似種にヒメアカタテハがおり,後翅の赤色が広がるが,本種では,後翅の赤色は外縁に沿って帯状に広がるのみである。
【雌雄の違い】
翅表の斑紋から雌雄の違いは見いだせない。雌の方が雄より一般に腹部が太く,触角は前翅の長さに比べて雄の方が相対的に長い。
【特記事項】

Inachis io(イナキス イオ) 孔雀蝶 Peacock

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オオハンゴンソウで吸蜜
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   裏面は真っ黒(雄)    越冬明けの汚損個体
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 吸蜜する雌            終齢幼虫
【特徴】
文字通りクジャク(Peacook)の羽根を思わせる派手な翅表のタテハチョウである。学名(日本亜種)のgeisyaは,もちろん芸者からきている。何とも言えない裏面の汚い(?)枯葉模様の黒色とのコントラストがフラッシュ効果を生み,翅表の鮮やかさを引き立てる。日本産で一番「ケバい」蝶であるが,ユーラシア大陸北部に広く分布している。
【分布】
中部以北に分布し,本州では低山地から山地にかけて,北海道では平地でも見られる。ユーラシア大陸の北部に広く分布する。
【食草】
カラハナソウ,イラクサなど。
【生態】
年2回発生し,越冬は成虫で,春先には汚損した個体をよく見かける。食草の葉裏に100個以上の山形の卵塊を積み上げ,若齢幼虫は集団で生活する。終齢になると分散し,食草から移動して蛹化する。
【近似種との区別点】
近似種はいない。
【雌雄の違い】
翅表や大きさは雌雄ともほぼ同じで,判別は難しい。雌は腹部が太いので,腹部の観察が良い。また,タテハチョウ科は,前脚の構造(雄の跗節は融合し節がない,雌は5節に分離),頭部の大きさ(雄は雌より大きい)などからも判別できる。
【特記事項】

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